令和四年 乾くことのない青時雨の頃に | KURIIWA STYLE

2022/05/17 10:00

 

最近すっかりテレビというものを観なくなった

観るとしても報道やドキュメンタリー番組のみ

その報道すら何かしら抑制や規制を感じられて気持ちが悪い

 

まだメディアの中心にテレビやラジオがあった時代

テレビの前にかじりつきラジオに耳を押し付けるようにしていた

都会のことなど露知らず地元で生きる術を漠然と考えていた1980年代半ば

食い入るように観ていたテレビコマーシャルがいくつかある

 

中でも、ヨコハマタイヤと今では見ることのないタバコの宣伝

アメリカンブルーのキャッチコピーでパーラメントのそれ

ニューヨーク・マンハッタンの夜景と流れてくる

ボビー・コールドウェルの歌声

Stay With Me 」が夢のような世界だった

ヨコハマタイヤのその映像はさておき

流れてくる曲に耳を奪われた

「約束しないと責めて」からはじまる

稲垣潤一さんの楽曲「ロングバージョン」

その歌詞を聴き込んで書き出した

最後のサビの「似た者同志のボサノヴァ、ちょっとヘヴィめなラヴソング」

ボサノヴァという音楽を調べて聴いてみたものの軽く感じた

「そうさ窓の下は乾いた都会の荒野」に都会はそんなものかと思った

やっぱり夢のような世界だった

Bメロ冒頭の「コピーのシャガール壁に」はちんぷんかんぷんだった

コピーのシャガールって何だ?と思いながらも記憶に残った

 

それぞれがまったく縁のない遠い世界の景色だと思いながらも憧れはあった

 

テレビで「外タレ」を覚え、

コマーシャルから音楽を教えてもらった

そんな時代だった

 

トウキョウに来ることになった、来たいからではなく異動で来た

地方の小さな町から大きな街へ流されて来てしまった

 

「乾いた都会の荒野」はすぐに体感し理解することが出来た

「窓の下」に見ることが出来なかったが殺伐としていた

 

忙しいふりで時が流れて25才でニューヨークに行くことになった

マンハッタンの初めての夜にヘリコプターに乗って夜景を眺めた

自由の女神の頭上で頭の中に

Stay With Me 」が繰り返し繰り返し流れた

夢ではなかったことに気がついた

 

30才で映画「ノッティングヒルの恋人」を観ることになった

ジュリア・ロバーツ演じる大物俳優アナと

ヒュー・グラント演じる本屋の店主ウィリアム

ウィリアムの部屋にはシャガールのコピーが飾ってあって

別れ際にアナがプレゼントするシャガールは本物だった

ようやく「コピーのシャガール」を理解することが出来た

また、その絵のタイトルが「結婚」と解った時には奥深さを感じた

同じ年にロンドンに行くことになって街を感じることも出来た

パリからニースに行った時には「本物のシャガール」を観ることが出来た

 

35才にトウキョウの街を見下ろすビルの最上階で店を構えることになった

 

改めて振り返ると

15才で感じた夢のような世界

住むことも行くことも想像出来ずに漠然と存在した「大都会」

ニューヨーク、ロンドン、パリに行き、ヨコハマで遊び

トウキョウに働き、50才を越えた今でも居ることが出来ている

 

自身のメディアを持ち、ラジオで番組を持ち立場が変わっている

まだ「大都会」にいることが出来ている今に深く感謝している

 

マンハッタンの映像にあった世界貿易センタービルがなくなるなど

想像すら出来ないぐらい変化した世界で35年後の今でもいる

 

トウキョウという街が少しだけ好きになって、憧れではなくなった

 

散歩が出来るかわからない五月の雨の今日

久しぶりに「ロングバージョン」を聴いてみた

あの頃のような若さはないものの

少し背中がムズムズする感じ

やっぱり良い曲だと思った

 

令和四年 乾くことのない青時雨の頃に