令和四年 木の芽時の時を調べながら | KURIIWA STYLE

2022/04/26 10:00

「会わせたい人がいます」

「仕事の相談があって」と

このところ、初めての場所に行く機会が多くなった

初めて、と言っても東京都内が多いのだが、

三十年以上東京に暮らしているので、

それなりに土地勘はある

趣味の散歩のおかげで、初めての場所でも勘は冴える

 

携帯電話が普及し始めた頃から、

人との繋がり方も様々に変化した

共有する関係者間で通信するためのグループを作り

場所や時間も瞬時に「共有」出来る便利な世になった

 

ただ、便利さを受け入れると同時に、

だらしなくなったことも感じる

 

「渋谷で5時頃に、着いたら連絡します」

渋谷のどこ? 5時頃って前?後? 連絡って電話?何?

(と、いうことすらおじさんなのかと思うが)は違った

「午後5時に渋谷駅ハチ公前で待っています」だった

こう言われたら、

約束の15分前に行って待たせないように心掛けた

早く着きすぎたり、待ちぼうけだったり、

それでも相手を想いながら待っていた

そういう気持ちを大切にしていた、もちろん今でも

初めての場所に案内する時は

一番近くて分かりやすい場所で待ち合わせ

目的地に向かうまでの時間の

コミュニケーションを楽しんだ、もちろん今でも

 

もうひとつ、

だらしなくなったなったと感じる電話の使い方

話したい人に直通することから生じる言葉の使い方

時候の挨拶もなく、いきなり話題に入る忙しない会話

 

だからこそ、気遣い出来る人との連絡は心地よく、嬉しい

「今、電話しても良いですか?」と

メッセージの後での直通電話

電話だと相手の時間を割いてしまう気遣いから

余裕を持ったメッセージでのやり取り

こんなことができる人はとても素敵だと思うし

その関係性を大切にして長くお付き合いしたいと思う

 

こんなことを書きながら、往年のアイドル菊池桃子さんの

「今日も渋谷で5時~」という

フレーズを思い出す同い年のおじさん

 

 

初めて場所での行動、

頼りの「電波」が通じない知らない場所で

まず空港、駅、港で地図を手に入れ、交通手段を確認する

宿泊する場所、訪ねる場所を確認して

公共交通機関かタクシーか歩くか決める

訪問場所に到着したらまた地図を確認、

その地図にその場所の記しを付ける

時間の許す限り周辺を散策して記憶して、

また歩く、ひたすら歩く

時間が出来たら目星を付けた酒場か喫茶店に立ち寄る

出来るだけ地元感が強い店で、

余所者扱いされようが、そこに居る

地の言葉を聞き、地の話を聞き、地の情報を集める

もちろん、酒と食も

 

そうすることで限られた時間を楽しむようにしている

約束の地で約束の時間にだいぶ早く着くことが多く

歩きすぎることもあるし、

歩いても歩いても何もないこともある

そんな時間もまた、決して無駄ではなくて

 

今の世の中は携帯している端末が

教えてくれて導いてくれる

だから、その時間に数分の余裕もなく狂いもなく到着する

俗に言うオンタイム

オフタイムがあるからオンタイムがあるし、

大切だと思うオフタイム

常にオンだと気が抜けず、気が張って、

気が回らなくなるのではないだろうか

電子機器にだって自動電源オフモードがあることだし

 

そう言いながら若い頃はそうだった、ような気がする

忙しい自分、忙しがっている自分、忙しいふりの自分

 

ある日のある場の初めて訪れたある酒場で

「忙しいんですね、見た感じでわかりますよ」

「えー、忙しいです」

「忙しいっていう字は心を亡くすって書くんですよ」

「あ、そうですね、気付かなかったな

 

 

緑が濃さを増していく街で今日も約束がある

また人と会い、人と話すことができる喜びを感じる

木の芽時の美しい季節のはずが

夏日になるとか、ならないとか

 

そういえば木の芽時っていつだっけ、

と調べる端末の上の指に思う

いつ部屋から辞書、辞典、地図がなくなったのかな、と

 

 

令和四年 木の芽時の時を調べながら

栗岩稔