令和四年 穀雨を迎える頃に | KURIIWA STYLE

2022/04/19 10:00


目に青葉山不如帰初鰹

清々しい青葉広がる清明を過ぎ、

穀物を潤す春の雨が降る頃

赤青黄色、彩り豊かなこの季節

 

「春雨の降りそめしより青柳の糸の緑ぞ色まさりける」

という美しい句が新古今和歌集にあり

「柳綠花紅」

手付かずの緑や花の自然こそが美しいという意味から転じた

ありのまま、あるがままが真髄であるという悟りの禅宗の言葉もある

この街にいると「尋花問柳」の花と柳の意味を置き換えて感じ

さながら「紅灯綠酒」と似合いの言葉も思い浮かんでくる

いずれにしても様々な「色」に彩られたこの季節を

感性で表す古の人々の言葉に深い感銘を受ける

 

手付かずの緑や花の自然は東京にはない

ないものの、整備された緑地の公園はある

明治初期、国の方針で「都市の肺臟」としての機能

住民の健康、衛生を手助けする機能を持たせる公の緑地

公園を整備するための法律が制定された

 

生まれた町にいる時には気付くことがなかった公園の良さ

仕事場だったり、読者場だったり、春眠場だったり

 

明治神宮の森は100年計画だったとも聞く

人の手が入ることによって維持出来る森

人の手が入ることによって整備される草花

この街にいるからこそ感じる春夏秋冬

この街にいるからこそ出来る晴耕雨読

そんなことを考える今日この頃

今のまま地元に暮らしていたらどうなのかと思ってみても

わかるはずなく、想像も出来ず

 

古の人々が築いてきた街で古の言葉を感じ

この街にいるからこそ本当の自然を

愛しく思うことに気付く東京の公園

 

 

いつかのどこかの街の公園で突然聞こえる鶯の声に

忙しいふりで季節を無視していた心を戻した声に

手にする飲料を落とすほどの驚きと感動を覚えた

「あの、すみません、山で録音してきた鳴き声なんです

「え、あ、はい、そうですよね、ここではね。

でも、ありがとうございます、春ですね。」

いつかの春、そう言葉を交わしたことがあった

 

あっという間に春が終わる気配漂う公園で

巣作りに忙しない木々のカラスと足元に彷徨くハト、スズメ

これもまた自然と思えるようになったこの年月

 

今では見馴れたいつもの彩りの春の東京で

目に青葉嘴太烏春酒場

 

穀雨が過ぎたら夏の始まり立夏を迎える

日本の夏、東京の夏、年々上がる最高気温

これもまた自然の営み、自然の脅威

 

令和四年 穀雨を迎える頃に

栗岩稔